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ウージェーヌ・イヨネスコ [ブック]

ベケットとは、不条理劇 & ノーベル文学賞受賞つながりです


イヨネスコ戯曲全集 2

ウージェーヌ・イヨネスコは、ルーマニア出身のフランス語作家(詳しくは、こちら)
(どうでもいいことですが、フランス文学もサッカーの代表チームとおんなじ、ハイブリッド多国籍集団で移民だらけです。なんたって、フランス語使ってさえいればフランス文学ですから)

イヨネスコの代表作は、もちろん、不条理劇の「犀」Rhinoceros
舞台は、どこにでもあるような田舎町
人々は、アペリティフを飲みにカフェに集まり、いつもの退屈な会話が始まる…
と、どこからか騒音、というか地響きが聞こえてきて
巨大な獣が通りをまっしぐらに駆け抜ける、犀だ
ちょっとした恐慌が起こり、人々は一生懸命言葉を並べて説明を試みる…
が、結局、時間を無駄にしただけ
やがて犀は大増殖、それと前後して市民が次々に失踪…
自らの醜悪な運命を悟った人々は勇気をくじかれ、勝ち誇った獣の誘惑に屈してしまう
一人残された主人公は、それでも、最後まで人間でいることを誓うが…

………

一般的な解釈では、迫り来る全体主義への恐怖がテーマということになりますが、それではちょっと皮相かな(もちろん、その時代的な背景は認めますが)
他者(=敵とは限りませんが…)はあくまで外部にいる、という呑気な前提が、今日ではもはや成立しなくなってきてる
つまり、他者は気づかぬうちに警戒線を突破しすでにこちら側に侵入、すぐ眼の前、いや体内にまで忍び込みそこでじっと孵化する機会をねらっている…
当blogでかつて「恐怖の4類型(4要素)説」というのを唱えたことがありますが、吸血鬼の恐怖(=孤立の恐怖)はもはや時代遅れで、新たに第5の類型が必要なのかもしれません…それは、エイリアンの恐怖、すなわち自分の中で蠢く何か得体の知れないものの恐怖…

妄想は、さておき…
戯曲ってのは、実際に演じられて初めて完結するもの
だから、ただ静的に筋を追っても意味がない、理屈をこねても見当外れなだけかもしれません
ベケットの「ゴドー」なら二人組みのアドリブ混じりのドタバタ劇、イヨネスコの「犀」なら舞台上を獣群団が突進するスペクタクル…観ればカタルシスが得られます、きっと

イヨネスコの作品では、他に…
「アメデ、あるいはどうやって厄介払いするか」Amedee Ou Comment S'en Debarrasser(フランス語表記できません)も印象的
アパートの1室に放置された死体が、やがて次第に巨大化、住人を窒息の危険にさらす…

さらに、
大権威ロラン・バルトのことをおちょくった「アルマ即興」ってのもあるそうですが、これは残念ながら未読です

というわけで、ここで死者を弔わないといけません
ボードレールとボードリヤール…この人もいつか取り上げようと思ってたらお亡くなりになってしまいました

(左)消費社会の神話と構造 (普及版)
(右)有閑階級の理論 岩波文庫
モノは、それが本来持っている使用価値によって消費されるのではなく、記号(=他者との犀、じゃなかった差異を示すためのもの)として消費される…なんて言ってましたが、今では別に驚きもしないありふれた意見です
っていうか、すでに19世紀末の時点でヴェブレンが「衒示的消費」を指摘してたし…
でも、フレンチの哲人が言うと、これが実にオシャレでカッコいいんだよな~(笑)
なお、ボードリヤールの登場は、次回のジョルジュ・バタイユの伏線になっています(わかる読者がいないと思うので、おせっかい、というかイヤ味で一言付け加えておきました)
…な~んて無責任なこと書いてたら、なんと翻訳者の今村仁司さんまでもがお亡くなりになってしまいました…このblogは死を招き寄せるようです
…合掌です

それから、この人も…
新聞の訃報欄に出てたんでかなりの大物? …で、てっきりリーダーのトム・ショルツが死んだと早とちりしてしまいました
ボストンのヴォーカル、ブラッド・デルプ…実は、自殺だったそうです

(左)幻想飛行 (紙ジャケット仕様)
(右)ドント・ルック・バック (紙ジャケット仕様)

今日の1曲
Don't Look Back 「ドント・ルック・バック」/Boston
チャリ坊(チャーリー・セクストン)ではありません…
http://www.youtube.com/watch?v=0EaNu4vxFjU

P.S.
それにしても、(またまた、どうでもいいことですが)今日のフランス文学の衰退は情けない
昔は、外国文学の半分近くは仏文で、英米文学を圧倒してたのに…
悔やまれるのは、ロシア人のナボコフ
彼がフランスに亡命して仏語で「ロリータ」を出してくれてれば、今日のような仏文衰退はなかったのに…って、やっぱり移民頼りかよ


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コメント 2

yubeshi

分かる所と分からない所がもちろんあるのですが・・・・トラップだけはかなり高い確率で見破れたと思います。と言うか・・・入れ過ぎです(笑)
by yubeshi (2007-05-11 23:44) 

モバサム41

紙ジャケへの持っていき方があまりうまく行ってない気もしますが、まあ、かまいやしません(笑)
とにかく、紹介しないといけないアイテムがいっぱいあるので…
by モバサム41 (2007-05-12 00:27) 

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