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海の沈黙 [ブック]




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ヴェルコール『海の沈黙・星への歩み 』 岩波文庫

ナチス・ドイツ占領下のフランス、1941年の冬。
とある村の一軒家では、年配の伯父と、その姪が二人きりで静かに暮らしていた。
そこにドイツ軍が空き部屋を探しにやってきて、荷物だけ置いて去ってゆく。

それから数日後の夜、一人のドイツ軍青年将校が現れ、2階の部屋を借りにやってくる。
ヴェルナー・フォン・イーブルナックと名乗る将校は、敵国の将校に対して沈黙をもって抵抗の態度を示す伯父と姪の二人に対して、「私は祖国を愛する人を尊敬している」と礼儀正しく同情の態度を示す。
将校は、戦地で片足を負傷していた。

伯父と姪は夜9時ぐらいになると、1階の暖炉のある居間で、伯父はコーヒーを飲み、姪は編み物をするのが日課となっていたが、以来、その時間になると、将校は毎晩のように居間に現れ、身の上話をしてゆくようになる。
初めは軍服姿だったが、それが二人に威圧感を与えると思ったのか、次第に私服に着替えて二人の前に現れるようになる。

実は作曲家で、父の影響で子供の頃からフランスに憧れを抱いていたという将校は、穏やかな話しぶりでフランスの精神と文化を讃え、この戦争は、独仏両国にとって幸福な関係をもたらすものだとの持論を展開する。
「太陽がヨーロッパ全土を照らすのです」
が、伯父と姪は、それに対してあくまでも沈黙で応えるのだった。

その後も、将校は、多くの優れた文学者を輩出したフランスと、同じく多くの優れた音楽家を排出したドイツの話、また、フランスの民話『美女と野獣』の話、バッハの音楽の話、シャルトル大聖堂を攻撃した話、元フィアンセと破談になったエピソード、『マクベス』の物語など、さまざまな話を連日のように話すが、話の内容はどれもドイツとフランスの融合を願い、同時に自らを目の前の二人に受け入れてもらうことを願っているかのようだった。

将校は次第に、姪に対して恋心にも似た視線を投げかけるようになり、姪も将校に対して密かに好意を抱くようになるが、それは決して態度に現れることはない。

春になり、パリへの2週間の休暇が許された将校は、以前から憧れていたパリの名所、建造物をつぶさに観光して歩く。
その後、休暇を終え、以前の家へと戻った将校だが、伯父と姪の前にはなぜか姿を現さなくなる。
伯父と姪は、そのことに何かを感じつつ、話題にすることはなかった。

ある日、用あって町のドイツ軍司令部へと赴いた伯父は、そこでたまたま将校と出くわすが、将校は会釈で応えるのみだった。

その数日後、ついに将校が緊張した面持ちで二人の前に現れ、この半年間にこの部屋で自分が話したことはすべて忘れて欲しいと切り出し、パリ滞在中にあった出来事を物語る。

将校はパリ滞在中、パリのナチス本部において、旧友から、強制収容所での大量虐殺の話を聞かされ、他の将校たちとサロンで議論になった際には、周囲の全員からフランスと融和するなどバカバカしい幼稚な考えで、ドイツはこの戦争でフランスを精神から叩き潰すのだとの考えを聞かされる。
「ドイツ帝国建設のための(フランスの)破壊であり、それこそが我々の義務、権利だ」

ドイツとフランスの融和、結合という持論に絶望を覚えた将校は、前線への転属願いを受理され、明日にはこの家を離れ、戦地へと赴くことになったのだという。
「ナチスは太陽になりえません」
将校に対して、それまで一切言葉を交わさずに沈黙で応えていた姪は、一言「アデュー(さようなら)」と言葉を返す。

翌朝、将校は家を後にする前に、アナトール・フランスの“犯罪的な命令に従わぬ勇気は素晴らしい”という言葉を目にする。
それは、伯父が、戦地へと立つ将校を思い止まらせようとして用意したものだったが、将校は戦地へと発ってゆく。
その日も普段通り朝食を取る伯父と姪だったが、窓の外では、“もや”を通して太陽が弱々しく輝いていた…。

以上は映画版のあらすじで、こちらのサイトから拝借させていただきました
なお、この映画を観たジャン・コクトーは、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の才能に驚嘆し、それまで誰にも映画化を認めていなかった自作『恐るべき子供たち』の監督をメルヴィルに依頼することになったそうです

今日の1曲
You're My Heart, You're My Soul 「愛はロマネスク」/ Modern Talking
1984年ドイツ産ユーロ歌謡です
日本でもヒットし、鮎川麻弥がカバー曲を出しました
偏狭な洋楽ファン(ほとんどがそうです…笑)からは、黙殺され続けています
http://www.youtube.com/watch?v=4kHl4FoK1Ys
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モダン・トーキング・ストーリー
初期JAPANも在籍したアリオラ(・ハンザ)レコードから出ていました

必ず勝ち抜きます


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