SSブログ

みんな死んじゃえ [ブック]




これも読むのがつらい本でした…

war2'.jpg
占領下パリの思想家たち 収容所と亡命の時代 平凡社新書
1939年、ドイツはポーランドに侵攻し、第二次大戦が始まった。翌年パリは陥落し、ドイツ軍の占領下に置かれ、ユダヤ人は迫害され、次々と収容所へ送られた。一方、ニューヨークは亡命者たちを受け入れた。サン=テグジュペリの『星の王子さま』はここで執筆され、レヴィ=ストロースはヤーコブソンと出会った。
息づまる占領とレジスタンスの時代、若きサルトル、デリダ、ボーヴォワール、コクトー、カミュたちはいかに生きたか?

スター・ウォーズのクローン大戦で、ジェダイがシスに追い詰められて行ったように(?)、この時代の知の最高峰ともいえる人たちも戦争の中で愚弄され、倒れて行きます
ポール・ニザン(作家)戦死、ヴァルター・ベンヤミン(文芸評論家)服毒死、アンリ・ベルクソン(哲学者)屈辱死、サン=テグジュペリ(作家)墜落死、マックス・ジャコブ(詩人)収容所で病死…
なんとか生き抜いた人たちも、戦場を支配する絶対ルール「殺される前に殺せ」の存在を知り動揺、変貌することを強いられます
例えば、サルトル
彼は、捕虜収容所での生活を体験したにもかかわらず、観念的・非政治的人間なので実践には全く不向き、占領下のパリで企てたレジスタンス活動もままごと遊びのレベルでした
それが、戦後、政治的ラディカリズムを身にまとい、文壇・論壇のスターの道を突き進みます
単なるポーズだと批判されることもありますが、自己の無力さに対する反省、友人や教え子たちの死と直面した体験などによって鍛錬された結果でもあるのでしょう

ユダヤ人弾圧については…やはり、避けては通れない
例えば、1942年7月に占領下パリで起こったヴェルディヴ(ヴェロドーム・ディヴェール=冬期競技場)などへの収容では、7月16日の午前4時頃から人間狩りが始まり、4,500人の警官が、1万3,152人のユダヤ人(3分の1が子ども)を捕獲。そのうち、8,160人はヴェルディヴに収容されますが、そこでは、スープは収容者の手のひらに直接そそがれ、飲料水の供給すら十分ではなかったようです。そして、数日後、母親たちは子どもから引き離され、ほとんどがポーランドのアウシュヴィッツへと送られて行きます。

マルグリット・デュラスと、その夫ロベール・アンテルムのエピソードにも触れておきます
1945年5月のある日、デュラスにフランソワ・ミッテラン(臨時政府の捕虜・被収容者担当副大臣)から電話がかかったきます。
「よく、聞いてくれ。ロベールは生きている。落ち着いてくれ。彼はダハウ(ミュンヘン近くの強制収容所)にいる。力を振り絞って聞いてほしい。ロベールは、君が想像もできないほど、ひどく衰弱している。言わなきゃならないが、時間の問題だ。あと3日は生きられるが、それ以上は無理だ」
ミッテランは、なんとかロベールを連れて帰ろうと考え、アメリカ軍本部にロベールの引き取りを懇願しますが、チフス感染の恐れがあるので許可が降りません。そこで、部下と再度収容所を訪問し、アメリカ軍兵士たちがナチスの親衛隊員を処刑している隙に、ロベールを奪い取ります。
収容所からの帰りの車の中で、ロベールはしゃべり続けたそうです。
「キリスト教の愛を唱えるやつがいたら、おれは何度でもダハウ(収容所のあり様)を見ろと答えてやる」
彼らが、パリに戻ったのは、翌々日の午後。デュラスは、サン・ブノワ街のアパルトマンの2階の住居でロベールに駆け寄りますが、その姿を見たとたん、金切り声を上げて、クローゼットの中に閉じこもってしまいます。彼女がそこから出て、体重が35キロのロベールをまともに見ることができたのは数時間後のことでした。
医師は一晩ももたないだろうと予告しますが、ロベールは17日間、生死の境をさまよった後、奇跡的に回復。その間、親友のディオニス・マスコロ(ガリマール社編集者)はベッドに付き添い続けました。ようやく少し力が出てきたころ、ロベールは、レジスタンス活動の仲間だったダヴィッド・ルーセと散歩に出ました。ルーセも強制収容所から生還したばかりで、体重は38キロに過ぎなかったとのことです。そして、この二人こそ、強制収容所を描いた文学の中の傑作(ダヴィッド・ルーセ『われらの死の日々』とロベール・アンテルム『人間という種』)を書き残した二人でした。
しかし、デュラスは…
「私は、あなたと別れなければならない。私は、ディオニスの子どもが欲しいし、この子どもに名前をつけるためにも離婚しなければならないの」とロベールに突然告げます。
ディオニス・マスコロは、ロベールの元にやって来ます。大学以来の信頼に結ばれた友人同士の別れについて、ロベールは1枚の紙に惜別の言葉を記します。
「これがぼくの友だちだ。
彼は、ぼくにすべてを語ってくれた。
少し顔が赤らんでいた。
両手が震えていた。
そしてぼくは、知らぬ顔などはできない。
彼の話に聞き入った。
そしてぼくは彼を両腕で抱きしめた。
そうだ、一緒に泣こう、泣こうよ。
ぼくの友だちは、ぼくをじっと見つめ、それから立ち上がった。
そして四つか五つピアノの鍵盤のキーをたたいて、立ち去っていった。
ぼくは、面目を失ったまま取り残され、
語られた話をかかえこんで、ベッドの上で縮こまっていた。
これがぼくの友だちだ。
彼は、ぼくにすべてを語ってくれた。」

今日の1曲
Kill Everybody 「キル・エブリボディ」/ Skrillex
サンダー !
サンダラ !!
サンダガ !!!
http://www.youtube.com/watch?v=SJRVegO3_IA
↑ モンスター総出演ですが、はっきり言って人間の方が怖いです
http://www.youtube.com/watch?v=zg5cAvZHKZ0
↑ ほら、人間って怖いでしょ
http://www.youtube.com/watch?v=OQIjGh9s4eg
↑ モンスターの代わりにスクリレックスが登場するノーマル・ヴァージョンです
sc'.jpg
スケアリー・モンスターズ・アンド・ナイス・スプライツ

ああ、すみません
ちょっと取り乱して電光石火、裁きのいかづちを放ってしまいました
ネトウヨは常に上から目線、国家や権力と一体化してものを語りたがりますが、私なんか唯一神と一体化してしまう特技があります(笑)

今回の記事は、前回同様、ブラジルW杯決勝トーナメント準々決勝で敗れる運命にある対戦国に鎮魂歌(レクイエム)を歌ってあげることだったのですが…
それが、うっかり取り乱し、残虐で救いようのない人類を滅ぼし、罪深き女を罰してしまいました(笑)
不適切な表現があったことを謹んでお詫び申し上げます
なお、おフランス贔屓のわがブログですが、フランスこそが正しいなどというつもりは毛頭ありませんので、その点は誤解がないように
本書の中でも(ジョルジュ・バタイユが報告していますが)、戦後すぐ、対独協力者に対する「粛清」が始まり、フランス国歌のラ・マルセイエーズを歌いながら生贄狩りを指導する、とっても感じの悪いプチブル女性が登場したりして、フランス的エスプリは一体どこに消えたの?と泣きたくなってしまいます

気分転換にもう1曲
99 Luftballons 「ロックバルーンは99(ドイツ語バージョン)」 / NENA
http://www.youtube.com/watch?v=6wMeOSED5W8
ne'.jpg
ファースト・アメリカ 紙ジャケット仕様
ネーナの紙ジャケ持ってるなんて…
このバランス感覚はさすがだなと自画自賛してしまいます(笑)

なお、人間という種は数百年後にも繁栄を続けるでしょうが、戦争と収容所も間違いなく傍に寄り添うでしょう

p.s.フランスが勝ったら顔見せします(笑)


コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

海の沈黙サイケデリック・ファーズ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。