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日蔭茶屋事件 [ヒストリー]




朝日新聞朝刊文化・文芸欄にて女優・岡田茉莉子による「語る ―人生の贈りもの―」が連載されていますが、4月16日の第11回にうちのブログでも随時追跡している大杉栄が出てきたのでちょっとびっくり
以下にそれを転載しておきます。

伊藤野枝を演じたのは運命
 《吉田喜重監督と結婚後、夫婦でフリーに。1966年には独立プロ「現代映画社」を設立する》
 今でいうストーカーが登場する「女のみづうみ」や非配偶者間の人工授精がテーマの「炎と女」など、吉田は性の問題を女性の視点から描き、様々な映像表現を試みました。私もキャラクター化された岡田茉莉子ではない、未知の岡田茉莉子を1作ごとに演じることができました。
 この頃テレビでは大河ドラマ「三姉妹」や「岡田茉莉子シリーズ」、舞台では菊田一夫さん演出の「細雪」などに。稼いだお金は、吉田との映画作りにつぎ込みました。
 《2人の代表作「エロス+虐殺」(70年)は、大正の無政府主義者大杉栄を巡る伊藤野枝ら女性たちの物語と、撮影当時の社会が交錯する》
 野枝を演じたのは運命を感じます。父は大杉栄に心酔するあまり、私に大杉と野枝の長女の名前「魔子」とつけようとしたそうです。母が懇願し、母の名前の一字の「り」を入れて鞠子になりました。
 野枝が現代の女子学生と対話する場面もあり、よく難解な作品だといわれます。吉田は「夢をみている気持ちでごらんください」と言っています。私は理論派の女優じゃないから、私の体が気持ちいいと感じるままに動き、演じました。
 作品のクライマックスは、恋愛関係がもつれた末に、当時著名な記者だった神近市子が大杉を旅館で刺した事件がモデル。一足先に上映されたフランスでは大反響でした。でも、神近さんがプライバシー侵害を理由に上映禁止の仮処分を申請して、日本での公開が危ぶまれました。
 70年3月の公開日、裁判所が上映を認める決定を出しました。私は有楽町の日劇地下の映画館で、いっぱいのお客さんと決定を待っていました。「勝った」と聞いて、みんなで拍手しました。涙があふれました。

おかだ・まりこ 1933年生まれ。映画「浮雲」「秋日和」「秋津温泉」などに出演。

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記事に登場した神近市子という人が気になったので、調べてみました
以下、Wikipedia より

神近市子
(かみちか いちこ、本名:神近イチ、1888年6月6日 - 1981年8月1日)
長崎県出身の日本のジャーナリスト、婦人運動家、作家、翻訳家、評論家。戦後は一時期政治家に転身し、左派社会党および再統一後の日本社会党から出馬して衆議院議員を5期務めた。
生涯
長崎県北松浦郡佐々村(現在の佐々町)生まれ。津田女子英学塾卒。在学中に青鞜社に参加する。青森県立女学校の教師ののち、東京日日新聞の記者となった。
1916年、金銭援助をしていた愛人の大杉栄が、新しい愛人の伊藤野枝に心を移したことから神奈川県三浦郡葉山村(現在の葉山町)の日蔭茶屋で大杉を刺傷、殺人未遂で有罪となり一審で懲役4年を宣告されたが、控訴により2年に減刑されて同年服役した。裁判では市子は社会主義者ではないと弁明し、野枝に対する妬みを詳細に陳述した。(日蔭茶屋事件。)
市子は出獄後、『女人藝術』に参加して寄稿したほか『婦人文藝』を創刊して文筆活動を開始した。
戦後、市子は1947年に民主婦人協会、自由人権協会設立に参加する。1953年、第26回衆議院議員総選挙に旧東京5区で左派社会党より出馬して当選した。1955年の社会党再統一により党内では左派に属し、計5回の当選を重ねたが1960年の第29回衆議院議員総選挙では落選しているため、連続当選は3回までとなった。また1957年の売春防止法成立にも尽力した。
1969年、政界を引退した。
1970年、市子は日蔭茶屋事件を扱った吉田喜重の映画『エロス+虐殺』の上映差し止めを求めて提訴したが、「周知の事実」として棄却された。 大杉の「自由恋愛論」に賛同した時代と、事件の反省から出獄後の中産階級的道徳へ回帰した時代とで思想的断絶が大きく、1956年には谷崎潤一郎の「鍵」を猥褻文書ではないかとして国会で問題にした。売春防止法成立に際しても、主婦の貞操を守るため娼婦の犠牲はやむをえないと述べるなど、他の廃娼運動論者とは一線を画していった。

ふむふむ…
過去記事「らいてう」では、以下のように書きましたが…

大杉の元に、野枝は、夫でダダイストの辻潤と2人の幼子、そして仕事(『青鞜』の編集長)さえも投げ捨てて、奔ります
そして、大杉の内縁の妻、愛人とのどろどろの四角関係を見事に(?)勝ち抜きますが…
束の間の平穏の後、1923年9月、関東大震災発生の混乱の中、憲兵大尉甘粕正彦(=坂本龍一)に大杉ともども連行され、撲殺されてしまいます(甘粕事件)

大杉の「愛人」というのが、この神近市子なんですね
じゃあ、「内縁の妻」って誰よ?と調べてみたら、社会主義者・堺利彦の先妻の妹・堀保子だそうで、大杉は堺宅に居候中に、拒めば焼身自殺すると言って彼女に迫り無理やり婚約
ところが、日蔭茶屋事件が起こり、2ヵ月後には彼女と離別となります
刺されて重傷を負った大杉は生活に困窮しますが、そんな彼を事件後も引き続き経済面で支えたのは、実は加害者の神近市子だったそうです
彼女は殺人未遂で有罪となり入獄することになりますが、そこに乱入してきたのが青鞜社では市子の後輩に当たる伊藤野枝
結局、野枝が勝利を納めるわけですが、野枝の略奪愛に対して世間の目は厳しく、彼女を魔性の女のように噂したそうです
なお、大杉は長女を「魔子」と名づけますが、それは世間から野枝との娘を悪魔呼ばわりされたのを逆手に取ったとのこと
さすが大杉ですが、娘からするとかなり迷惑な話だったかもしれません
ついでに補足しておくと、大杉と野枝の子供たちは皆モダンな名前です
次女はエマ、三女もエマ、四女はルイズ、長男はネストル…さすがのコスモポリタン、大杉です(笑)

今日の1曲
Dude (Looks Like A Lady) 「デュード」/ Aerosmith 1987年
https://www.youtube.com/watch?v=nf0oXY4nDxE
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エアロスミス 『パーマネント・ヴァケイション

今日の1冊
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ハーディ 『日蔭者ヂュード 上』  岩波文庫
「テス」とならんでハーディの名声を世界的に高めた小説。パン屋の小僧をしながら学問に志していた孤児ヂュードも肉欲の女アラベラと関係したばかりに人生行路に狂いを生ずる。彼は従妹シューの精神愛にひかれ、新しい家庭を築きあげようと試みるが過去の傷が2人を悲運へと追いやる。霊肉の争いを描いた深刻な近代小説である。


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