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マダム・ハナコ [ブック]




過去記事「微笑んでよサラ」で紹介したこの人と再会できるとは思ってもいませんでした

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ハナコ(本名は太田ひさ)
20世紀初めに渡欧し、あの先駆者ロイ・フラーに見出され、各地で歌舞伎風のスペクタクルを興行、その看板女優として人気を博した人で、ロダンは彼女のパフォーマンスに感動、モデルを依頼しました(なお、森鴎外の『花子』は、ロダンの求めで花子が裸体モデルになるという東西異文化の遭遇場面を描いた短編小説)

8月4日付付朝日新聞書評欄から
西洋人のハート、誠意で射抜く
本書は明治35(1902)年から大正10(1921)年までの約20年間、西欧で女優マダム・ハナコとして活躍し、ロダンにも愛でられて多数の彫刻のモデルとなった太田花子の足跡を、本人からの聞き書きと内外の史料や証言、埋もれた記録を掘り起こしつつたどった労作である。
不幸な生い立ちを背負った花子は芸者屋へ売られ、駆け落ちした男にも捨てられて失意のどん底に。国際博覧会など日本ブームにわくドイツへ渡って女優になり、やがて一座を組んで西欧諸国を巡業、ロシアの涯てからニューヨークまで縦横無尽に駆け巡って大人気を博す。異国の言葉もわからず知識もない花子がよくあの時代に活躍できたものだと驚嘆させられる。
とはいえ、それだけなら「世界の涯てに日本人がいた!」という程度の感嘆符で終わってしまう。本書の肝はそこではない。
なぜ花子は西洋人にこれほどモテたのか。西洋人から見れば子供のような体形の花子が舞台の上で切腹の場面などをリアルに演じて拍手喝采を浴びる。東洋人の女優が珍しかったのは確かだろうが、本書に掲載された数々の写真を見ても、正直、花子は美女ではなく、愛くるしいとも言い難い。
著者は巧みにその謎を解いてみせる。夫が死んだときも、開幕が迫る中、列車の中で号泣しつつ巡業地へ向かう花子。山賊が出るという山道で遅れ、塵穢にまみれたまま舞台の前で観客に詫びる花子。巡業の列車ではトイレでも必死で異国語を覚えた。どこにいてもロダンを気づかって手紙を書き、ロダンの内妻を思いやる。やっぱり心なのだ。それだけは世界共通!
森鴎外をはじめ当時の日本人は、芸者あがりの花子を酷評し嘲笑した。誤解の元となる短編まで書いた。だからこそ、著者は本書を世に問うたのではないか。表層で人を評価してはいけない。言語や知識を越えた誠意だけが、人を、世界を動かすのだ……と。

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大野芳 『ロダンを魅了した幻の大女優 マダム・ハナコ』 

過去記事「ベル・エポックの肖像」で登場したヤンキー娘ロイ・フラーが踊り子ではなく、プロデューサーとして登場、ハナコのヨーロッパでの大ブレイクに一役買ったというのもびっくりです

ついでなんで、未紹介だったこちらも紹介しておきます
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パリ[ハート]グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展
2017.10.18.wed.→2018.1.8.mon.三菱一号館美術展
19世紀末パリ、それまで情報伝達や複製の手段でしかなかった版画は、新たな芸術表現を切り拓く重要なメディアとなりました。トゥルーズ=ロートレックや世紀末の前衛芸術家たちによって、版画は絵画と同じく芸術の域まで高められ、それらを収集する愛好家も出現しました。一方、大衆文化とともに発展したポスター芸術をはじめ、かつてないほど多くの複製イメージが都市に溢れ、美術は人々の暮らしにまで浸透しました。世紀末パリにおいて、「グラフィック・アート」はまさに生活と芸術の結節点であり、だからこそ前衛芸術家たちの最も実験的な精神が発揮され、時代を映すメディアであったと言えるでしょう。本展は、こうした19世紀末パリにおける版画の多様な広がりを検証するものです。当館およびアムステルダム、ファン・ゴッホ美術館の貴重な19世紀末版画コレクションから、リトグラフ・ポスター等を中心に、油彩・挿絵本等を加えた計約140点を展覧します。

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ロートレックによる「ロイ・フラー嬢」は、色違い2種が展示されていました

そうそう、久しぶりに図譜を購入しました(笑)
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パリ[ハート]グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展
19世紀末パリ、猫も杓子も踊り子も、みんな版画に恋をした。

今日の1曲
当初、ニルヴァーナ、ビーチ・ハウス辺りを想定していましたが…

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リンゼイ・ケンプさん(英舞踏家)がイタリア中部リボルノの自宅で急死、80歳。関係者が25日、英PA通信に明らかにした。
38年、英中部リバプール郊外生まれ。60年代に舞踏集団を旗揚げする傍ら、ダンス教室の講師も務め、英ロック歌手のデビッド・ボウイやケイト・ブッシュらが生徒となった。
ダンス、演劇、パントマイムなど、さまざまな表現ジャンルを融合した前衛的な舞台で知られた。たびたび来日も果たし、「真夏の夜の夢」「ONNAGATA(女形)」「エリザベス1世」などを上演した。

上記のような訃報が飛び込んで来たので、急遽、方針転換
もう何回かやってますが、これしかありません
Flowers 「フラワーズ」 / Zaine Griff and Kate Bush
リンゼイ・ケンプ・カンパニーの門下生2人によるデュエットです
https://www.youtube.com/watch?v=kWDN45X0sbg
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ザイン・グリフ 『フィギュアーズ



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