ボーっと生きてんじゃねーよ！

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「折々のことば」第３弾は、2018年に登場した「ことば」の中からのベスト・セレクションです（ただし、既出のものは除く）
それでは、どうぞ

折々のことば　1043
お前が永いあいだ深淵をのぞきこんでいれば、深淵もまたお前をのぞきこむ。
ニーチェ

自分が否定するものと闘ううち、人はしだいに相手に似てくると、19世紀ドイツの哲学者は『善悪の彼岸』（信太正三訳）で言う。そのとき人は、これまで想像もしなかった化け物が自分という存在の「深淵」に潜むのを知って愕然とする。別の著作『ツァラトゥストラ』（吉沢伝三郎訳）でもこの「深淵」にふれ、「人間は、生を深く洞察するに応じて、苦悩をも深く洞察する」と書く。
2018.3.8

折々のことば　1046
世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう
クロード・レヴィ=ストロース

途中から世界に現れ、やがて先に消えてゆく人類には、その世界に「修復不能な損害を惹き起すいかなる権利」もない。人類は世界の主（あるじ）ではない。世界の中で自分が占める位置を知るために、人類は自らの背後にもう一つの眼をもつ必要がある。その眼をフランスの民族学者は、のちに世阿弥の「離見の見」に倣い「はるかなる視線」と呼んだ。『悲しき熱帯』（川田順造訳）から。
2018.3.11

折々のことば　1099
「おじょうさん　はなれててくださいな」「これからまっかな血がとびちることになりそうです」
野比のび太

一度は言ってみたい口上。ライターに筋書きを書いた紙を入れ点火すると現実がその通りになる「ひみつ道具」の「シナリオライター」。しずかちゃんを救おうと使うが、「おしょうさん、はなれててくだちいな」「これからまっかな皿が…」と誤字でトホホな結果に。調子づくとつい足許（あしもと）が疎（おろそ）かになる。
藤子・Ｆ・不二雄『ドラえもん』8巻から。
2018.5.4

折々のことば　1234
私は、今とずっと後のことだけを考えている。だから、明日の約束はできないが、百年後の約束ならできる。
アマゾンの先住民

文明と接触をもたないアマゾンの先住民「イゾラド」（隔絶の民）の記録を制作してきたNHK のディレクター・国分拓（ひろし）は、かつて先住民の一人がこう語ったという。明日のことより遠い未来をはるかに雄弁に語る民。夜空にいつも見える星のように、彼らは遠い未来への希望を支えに苛烈なその生を行き抜いてきたのか。近著『ノモレ』から。
2018.9.21

折々のことば　1246
ボーっと生きてんじゃねーよ！
チコちゃん

NHK のクイズ番組「チコちゃんに叱られる！」。答えに窮する大人たちを、司会の着ぐるみの5歳児、こんな基本もわきまえずに生きてきたのかと一喝する。「ボーっ」は注意散漫なこと。でも、予期せぬ事態にしかと対応できるよう、あえてふわっと身を漂わせておくのも時には大事。ただ、スマホに没入する傍（はた）迷惑な人には「ボーっと歩いてんじゃねーよ！」と言いたくもある。
2018.10.3

折々のことば　1268
There is no pleasure in the work
川久保玲

服の概念を根こそぎ変える実験的な作品で世界に衝撃を与えてきた≪コムデギャルソン≫。このブランドを主宰するデザイナーはいかなるレッテル貼りも拒んできた。一つ成功してもこれを模倣せず、特定のスタイルに固まらない。そんな表現という仕事に妥協や達成感はありえない。だからだろう、「仕事に喜びはありません」と英紙ガーディアン電子版（9月15日配信）のインタビューに答えた。
2018.10.26

折々のことば　1284
いま在る あなたの如く　私の如く やすらかに　美しく　油断していた。
石垣りん

広島に原爆が投下された「午前八時一五分は／毎朝やってくる」と、詩人は詩「挨拶」（1952年）に記す。核の装備があちこちでなされ、地球は「生と死のきわどい淵」にあるのに、一瞬にしてあまたの命を奪ったあの日の記憶は遠のき、人は和に安らう。かつてのその健やかな微睡（まどろ）みのすきをついて戦禍が始まっことを忘れまじと。
2018.11.11

今日の１曲
The End of the World 「この世の果てまで」/ Brenda Lee　1963年
https://www.youtube.com/watch?v=KLkLs6SvyDM
ブレンダ・リーは、アナログ盤しか持ってなくて、しかも押入れの奥深くに眠っているので確認できませんが、多分これ（「ゴールデン・ディスク」）です