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SALOME [ブック]




個人経営のお店はとうの昔に絶滅
近くには、すばるかTSUTAYAしかない状態で、ああ、まともな本屋に行きたい、できたら大型書店に行きたいという気持ちが募りましたが…
ようやく東京都が書店を「社会生活を維持するうえで必要な施設」に認定したとかで、その結果、三省堂も緊急事態宣言の当初目安である5月6日以降に一部店舗の営業を再開することを決定してくれました
ただ、そうは言っても、神保町本店にまで遠征するのはまだまだ恐い
私の所から一番近いのはそごう千葉店になりますが、ここは大型商業施設の中なので再開リストからは落選…
ちょっと途方に暮れていましたが、そうそうもう一店あったんだ
そごう千葉店のすぐ近くの雑居ビルに入っているカルチャーステーション千葉店!
ここのビルは、B1~2Fにヨドバシカメラ、4Fにはイエローサブマリンがホビーベースを構えていたりして、巷では「千葉のアキハバラ」と呼ばれている聖地で、それに釣られてか3Fの三省堂もホビー関連を強化、コミックの在庫は県下No.1(自称)だそうで、こういうオタク臭の漂う所は私は苦手なのですが(笑)、贅沢は言っておられません
で、昨日、速攻で行って参りました

目あては、これ
2020年5月の新刊 文春文庫
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世紀末のロンドン。妖しい容貌と数々のスキャンダルで時代の寵児になった作家ワイルドと、天才画家ビアズリーの愛情を描く

実は、単行本が出た時(2017年1月)から気にはなっていたのですが…
単行本は分厚いし、値段が高い
ビアズリーが天才なのは既に十分承知しているので、彼の作品を紹介してくれればそれで十分
オマケのフィクションは要らねぇんじゃね、とパスしてしまいました

でも、読んでみたら…決して悪くないです

(以下、引用)
ゴホン、ゴホンと咳がこぼれる口を肩でふさぎ、オーブリーが斧のように尖った横顔をこちらに向けた。
「やあ、姉さん……支度はできたかい?」
彼に似た鳶色の瞳を妖しく揺らめかせ、オーブリーが苦しげな息をついて訊いた。メイベルは、ひとつ、うなずいた。
「ええ、こちらへ来てちょうだい」
細長い影がゆらりと立ち上がった。スケッチブックと鉛筆を手にすると、足元に散乱した紙くずを蹴散らして、オーブリーは姉の寝室へと入っていった。
メイベルの小さな寝室には、べッドのほかに、小さなクローゼット、書き物机、そして鏡台が置かかれてあった。鏡台の上に載せられたオイルランプが、部屋を照らす唯一の明明かりであ。る
メイベルは、鏡台の前のスツールに腰かけると、左側の上半身を鏡台にもたせかけ、少し離れたところに立ち尽くすオーブリーに向かい合った。
白い麻の寝間着の下で、ほっそりした身体が息づいている。ランプに照らし出されたうなじは、夜の底でひっそりとたゆたう海百合のように、呼吸するたびに静かに脈打っている。
オーブリーは、壁に背中を寄りかからせて立ち尽くしたまま、無言でメイベルをみつめている。彼の肺の中の嵐は、しばし鳴りを潜めたようだ。
傍らに抱えていたスケッチブックを構えると、オーブリーは紙面に鉛筆を走らせ始めた。射るようなまなざしが、メイベルの顔を、身体のあちこちを飛び回る。メイベルは、体がどうしようもなく火照るのを感じて、オーブリーに気づかれないように、肩でそっとため息をついた。
こうして、いくたび弟の絵のモデルになってきただろうかーー。

フュージョン(融合体)として成功していると思います
ビアズリーの分身、メイベル姉ちゃんの活躍もうれしいです

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原田マハ「サロメ (文春文庫 は 40-4)
おそろしいのだ、彼の絵は。
おそろしいほどに、蠱惑的なのだ。
(ちなみに、単行本の帯のコピーは、「私と一緒に地獄に堕ちよう」でした)

今日の1曲
Señorita 「セニョリータ」/ Shawn Mendes & Camila Cabello 2019年
https://www.youtube.com/watch?v=tcrTQUVkUe0

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