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閉ざされた城の中で語る英吉利人 [ブック]



書きかけの記事をなんとかしろよ…
どこからともなく声が聞こえてきますが、無視して

まずは、これを
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デルヴォーの誕生日(9/23)に行って来た「ベルギー幻想美術館」ですが、
何ヵ月前のネタを書いてんだ…とまたもや幻聴が聞こえてきそうなので、本体はカット、おまけの戦利品だけ紹介しておきます
一番のお気に入りは、もちろん「サロメ」のしおりです

…というわけで、「ビアズレー友の会(秘密協会)のために」の序文で始まるこの書物
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閉ざされた城の中で語る英吉利人 中公文庫

フランス幻想文学基本図書120選」のエロス部門の1冊
奢霸都館から単行本で出ていた生田耕作訳のこの作品が文庫本化されているとは知りませんでした(もう7年も前に…相変わらずの情報不感症)

最初に読んだのは、澁澤龍彦訳の方で、白水Uブックスで手軽に入手できたこちら
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城の中のイギリス人 白水Uブックス

持ってるだけで変態扱いされかねない「危険書」なので、2冊も揃えて変態の上書きインストールをする必要はなかったのですが、金子國義の描く蛸ちゃんがあまりにキュートだったので買ってしまいました

内容については…
まあ、一種の冗談本ととらえておくのが猛毒に侵されないための安全策ですが、それでは主人公のモンキュ(かつて世紀末紳士同盟・黄金の7人の1人として召集させていただきました)から意気地のなさを笑われてしまう
この専制君主は激越で、ブルジョワジーの秘かな愉しみを情け容赦なく糾弾します
「どんな狩猟でもすべてそうだが、肝心なのは<死刑執行>だという悟りが、奴らのちっぽけな頭蓋骨の中へは永久に入り込まないんだろうか?…獲物へ向かってしゃにむに襲いかかる、猟師のひたむきな熱狂へ行き着くんじゃなけりゃ、連中のお遊びなんて、薄っぺらな作りものの域から出られるわけがない」
ものすごい選民意識が鼻につきますが、でも、言いたいことはわからないでもない…
「草食系」とか「肉食系」とかいう言葉が近頃はやりのようですが、肉食系を目指す方はぜひこの本を読んで自分の未熟さを確認してください
愛の独裁政治とは、相手に対する絶対支配、自己の消滅をも受け入れさせる境地なのかもしれません

セメレ「真の姿を見せてください」
ゼウス「正気か? それが何を意味するかわかっているのか?」
セメレ「あなたはいかなる望みもかなえてやるとおっしゃいました。私はヘラに負けたくありません」
ゼウス「嫉妬深い女神にそそのかされたのか? だが、おまえは…」
セメレ「あなたはいかなる望みもかなえてやるとおっしゃいました。ヘラと愛を交わす時の姿で私の前にも現れてください」
ゼウス「だが、人間であるおまえは…」
セメレ「あなたはいかなる望みもかなえてやるとおっしゃいました。万能なる神よ」
ゼウス「やむを得ん…」
途端に電光が輝き、雷鳴が轟いた。
セメレは…耐えられるはずもなく、燃え尽き絶命した。
しかし、その時、火中から胎児の産声が…ディオニュソスの誕生であった。

…というわけで、ここで二番煎じ
「眼球譚」vs「目玉の話」に続いては、「イギリス人」vs「英吉利人」
まずは、澁澤訳の「イギリス人」
 
 明らかにミシュレットは、すでに正気を失っていた。仰向けにひっくり返り、髪の毛を水の中でざんばらにして、両脚を思いきり開いていた。その膝は金網で引っかかれて血を流していた。ぼろぼろになったクレープやレースの断片が、まだ彼女の傷だらけの肉体のあちこちを覆ってはいたにせよ、この破廉恥な姿態はどこから見ても申し分なく破廉恥で、私たちの目には裸体以上に(あるいは裸体以下に)みだらなものだった。五匹の蛸が彼女の身体にへばりついたまま、もう動こうとしなかった。その触手は、彼女の脇腹と腹と皮膚にぴったり貼りついていた。もう一匹、大きいやつが近づいてきて彼女の顔に貼りついたので、まるで彼女は醜悪で滑稽な仮面をかぶったようになった。こうして、ちぎれた絹とレースと、血と、蛸の墨と、砂と塩水との混り合ったなかで、少女の肉体と軟体動物頭足類とがからみ合っている有様は、一種厳然たる人獣交媾の段階に達していた。おそらく曖昧に崇高とでも呼ぶ以外には呼びようのないものが、そこには見てとれたのだ。かくて私はまったく自制心を失って、ヴィオラにつかみかかると、彼女のガウンを剥ぎとって、金網の上に彼女を押し倒そうとした。しかし私よりも早く、この情景の効果を感受している者がいて、私は一発やっている暇がなかった。
 「天上天下すべての臀にかけて」とガムーシュの主人が叫んだ、「いまやおれは勃然としてきたぞ!」

次に、生田訳の「英吉利人」

 どうやら、ミシュレットは気がふれてしまったみたいだった。髪を水中に浸したまま、両脚を広げて、仰向けに横たわり、膝頭は金網にあたってすりむけ、血をしたたらせ。このあられもない姿勢は、ぼろぼろにちぎれたデシンかレースの布が傷つき汚れた体をまだところどころ装ってはいたものの、素裸の状態よりももっとよく(いや、もっと悪く)私たちの視線の前に彼女をさらけ出すのだった。五匹の蛸は、彼女の上にはりついたまま、もはや身動きもしなかった、その触手を彼女の脇腹や、下腹や、太腿の皮膚の上にぴったりと結わえつけ。もう一匹、なかでもとびきり大きなやつは、彼女の顔の上にやってきてそこにはりつき、ぞっとするほどグロテスクな仮面をかぶせていた。裂けた絹やレース、血潮、生き物の墨、砂、そして汚された水などから成る舞台装置の中で演じられる、軟体頭足動物といとけない肉体とのこのような縺れ合いは、<崇高>という言葉で漠然と言い表されるものをたぶん内にひそめた雄壮な野獣性の度合にまで到達し、私はすっかり正気を奪われてしまった。ヴィオラの体を鷲づかみすると私は、彼女から化粧着を引っぱがし、金網の上へ仰向けに押し倒した。が、他の連中にもこの見世物の効果は現われ、私のほうは玉門へ突っ込んでいるひまがなかった。
 「天上天下すべての尻に誓って」とガムーシュの主がわめき立てた。「やっと勃起できそうだぞ!」

微妙ですが、生田訳の勝利かな

今日の1曲
Play On Love 「愛を奏でよう」/ Jefferson Starship
http://www.youtube.com/watch?v=KGQ4mx0lk5A
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レッド・オクトパス 紙ジャケット仕様


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コメント 4

sknys

モバサムさん、こんばんは。
『城の中のイギリス人』は単行本と白水Uブックスの2冊買いました^^;
白水社から豪華本も出ています。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4560092265

マンディアルグが「跋文」を書いている
『O嬢の物語』の作者は女性(ドミニック・オーリー)だったんですね。
こんな「蛸ジャケ」もありますよ^^
http://www.amazon.com/Eight-Arms-Hod-Veruca-Salt/dp/B000002RBT
by sknys (2010-05-03 22:53) 

モバサム41

sknysさんも変態レベル2でしたか…心強いです(笑)
でも、白水社の豪華本については、単行本で3千円台ですから、ただの(ちょっと値の張った)普通の本って感じです。
豪華本を語るなら、今なら奢霸都館の部数限定シリアルナンバー(?)入りの希少本じゃないでしょうか?(持ってないけど…)
by モバサム41 (2010-05-04 10:01) 

sknys

「新装版」と書くべきでした。
旧版『城の中のイギリス人』(白水社 1982)はA5判・函入・
フランス装・定価2400円。
原本(初版)を模した「スコットランド風のチェック模様」の
装幀になっています^^
http://www.geocities.jp/bonidoni24/mande24.JPG

変態・暗黒・悪魔ものはモバサム卿に丸投げして、
「可愛い子猫ブログ」を目指そうかしら。
こんな「蟹ジャケ」もありますよ。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/images/B00000G9N6
by sknys (2010-05-05 00:49) 

モバサム41

sknysさん、コメントありがとうございます。
本と怪獣ソフビは、凝りだすときりがないですからね。

「可愛い子猫ブログ」を目指すのは勝手ですが、借りてきた猫というか、猫かぶりというか、猫の皮をまとったライカンスロープ、ルー・ガルーではないかという疑いがあります。

蛸ジャケは、ジェントル・ジャイアントも候補にあがりました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000YY67JA/monocolle-22/ref=nosim

by モバサム41 (2010-05-05 19:53) 

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