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トリスタン伝説とワーグナー [ブック]




昨年はワーグナー生誕200年ということで、こんな本も出ました

死の毒薬が「愛の媚薬」に変わるとき…
ふたりのめくるめく愛が始まる!
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トリスタン伝説とワーグナー 平凡社新書
ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』は、九世紀のケルト世界に起源をもつ悲恋物語。
中世に宮廷詩人たちが広く語り伝えたことから、各地に無数のバリエーションが存在する。
現存する断片からトリスタン伝説の全貌を描き出し、ワーグナーによる物語の独創性を探る。
登場人物と楽劇の魅力を徹底的に読み解く、ワーグナー・ファン必読の書。

文庫本では、トリスタン伝説は数種出ていますが、新書で主役を張るのはもしかして初めて? ということで、購入しましたが…
うかつに読むのは危険です
トリスタン物語の伝播を、大きく三つの系統に分け(ベルール系、風雅体系、散文トリスタン系)、それぞれの物語要素の差異を事細かく追究していくという本書のスタイルは、トリスタンおたく(=些細な差異に価値を見出し、愛好し、網羅的に収集しようと試みる人)の私なら耐えられますが、一般ピープルの方なら「どうでもええじゃないか」と投げ出してしまう可能性大です
また、トリスタン愛好家のロマンティックな幻想もズタズタに引き裂いてくれます
今でこそトリスタン物語はアーサー王伝説の一挿話だと受け止められていますが、実は、もっと起源の古いもので、その背景に描かれた風習などは、十二世紀ヨーロッパの騎士的キリスト教的文明のものではなく、九世紀の遙かに未開の社会のものであるなどという指摘…たとえば、トリスタンが恋人に送る逢瀬の合図が、(今ならスマホのメールで一瞬でしょうが…)宮殿(実は、掘立小屋…)の中のイゾルデの部屋には泉が流れていて、その上流から木片を流すというやり方であったなどと言われちゃったら、未開人は性急な現代人より「過程」を重んじるんだよ、とすっとぼけて返すしかありません
恋人たちがマーク王から逃れて送った森の中の生活も、「エデンの園」などではなく、飢えと寒さに苦しめられた悲惨なものだったのでしょう

今日の1曲
Prelude 「前奏曲」 Tristan Und Isolde 「トリスタンとイゾルデ」より / Richard Wagner
http://www.youtube.com/watch?v=J-qoaioG2UA
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世紀末の夢~ウィーン、パリ、モスクワ~

あと気になるのが、帯の絵…
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ノイシュヴァンシュタイン城の「狂王」ルードヴィヒ二世の寝室の壁画(by August Spiess)だそうで、雰囲気は良いのですが、トリスタンの髭面だけは違和感あり
武勇抜群で戦いには必ず勝つトリスタンですが、瀕死の重傷を負うこともしばしばで「脆くて儚い」イメージが付き纏います
なので、青臭い貴公子の姿がよく似合う
おそらく、ビアズリーのペン画が私の脳裏に刷り込まれているからでしょうが…

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トリストラム卿が傷を癒すため、初めて美しきイソードの介護を受けること。

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マーク王が裸のトリストラム卿を見つけたこと。

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トリストラム卿がモルガン・ル・フェから盾を受け取ったこと。

イゾルデも…
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美しきイソードがトリストラム卿に手紙を送ったこと。

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トリストラム卿と美しきイソードがイングランドに入ったこと。ラーンスロット卿が二人を「喜びの城」へ連れて行ったこと。
このイソードはブ○イク…というか、ビアズリーは女性をあまり美しく描きません
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アーサー王物語 Ⅲ

他の画家の作品もどうぞ
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麗しのイズー by ウィリアム・モリス
モリスの絵は、大変貴重です

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トリスタンとイゾルデ by エドモンド・ブレア・ レイトン

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ナイツ オブ ザ ラウンド
トリスターナ

たぶん続きます


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makimaki

訪問しました
by makimaki (2014-02-23 06:41) 

モバサム41

makimakiさん、いつもご訪問ありがとうございます。
by モバサム41 (2014-02-27 01:34) 

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