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The Doors of Perception 知覚の扉 [ブック]




ああ
ください
メスカリンを
ペヨーテサボテンから抽出される、不思議な幻覚剤
それを飲みほせば、世界が変わるという…

しおれた一束の花が内なる光に輝き始め、意味を充填されてその重みにうち震えだす
あるがままの花の存在を取り戻す
それは、無常でありながら永遠の生命であるような無常、
絶えざる消滅でありながら同時に純粋な「存在」であるような消滅、
微小な、個々別々のものの特殊の集まりでありながら何か言うにいわれぬ、だがまた自明でもある逆説によって全実在の聖なる源泉を見ることができるものとしての個別の束

そこは、創造された日の朝にアダムが眼にしたはずの世界
すべてが裸身をさらけ出す、奇蹟の世界

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知覚の扉 平凡社ライブラリー
(やけにどでかい)帯のコピーにもあるように、ドアーズのバンド名の由来となった、オルダス・ハクスリーの『知覚の扉』ですが…
これは、論じるのが非常に難しい書物です
何人かの証言を得ているので、そういう世界があるのだろうということは、おぼろげにはわかります
また、「存在そのもの」とか「無限の意味」とかいうのは、新プラトン主義者などがやたら使う常套句なんで、いつの間にか「不動の一者」(=神)への近接点に迷い込んでいるというのも察知できます
しかし…
三次元世界の住人には、四次元世界の存在をうかがい知ることはできません
地上をうごめく死すべき生き物には、天界の超越者の流儀を想像することなど不可能なのです

(不釣り合いな)帯をほどけば…
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「百水」フンデルトヴァッサーの奇怪な画が出現します

解説によると、アメリカ西海岸を中心に60年代から始まった意識革命の原点となったのがこの書物だそうで、ハクスリーは意識革命の主導者ティモシー・リアリーの理論的支柱になったとのことです
また、メスカリンの人体実験を試みた先駆に『夢の世界』(2年前に予告しながら、未だに実現しない新シリーズ「岩波文庫ベスト・セレクション」に登場予定)のハヴロック・エリスがいるそうで…
ハクスリーの『知覚の扉』は、私にとって、サイケ&ドラッグ・カルチャーの教祖と、フロイトによって葬り去られた性心理学者、二人のマッド・サイエンティストをつなぐミッシング・リンクだった、と判明しました
メスカリンの効用については、摂取者の潜在的能力や関心によって、大幅に異なってくるとのことで、メスカリンのもう一人の実験報告者、フランスの詩人アンリ・ミショーは、「自我」の崩壊過程での苦しみを地獄図として描いているそうです(もちろん、ド・クインシーの『阿片常用者の告白』も忘れてはいけません)

「扉」の向こうには、一体何が待ち受けているのか?
「扉」は天国の門、それとも地獄への崖っぷちなのか?

ハクスリー作品の元ネタは、詩人ウィリアム・ブレイクの「天国と地獄の結婚」の一節でした
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ブレイク詩集 平凡社ライブラリー
六千年の後に世界が火で焼かれるという古の伝説は私が地獄から聞いたところによると真実である。
火焔の剣をもてる天使ケルビムは生命の木を守る役目を解かれる。かくて今有頂天になり、また腐敗せる如く思われている万物は焼き浄められて、無限に、神聖になる。
このことは感性のよろこびの浄化によって実現されるのであろう。
それには先ず人間の霊と肉とが別々であるとの考えを消すべきである。これを私は腐蝕薬を用いる地獄の印刷法によってなそうと思う。この方法は目に見えている表面を消し去り、隠された無限を顕すのであって、地獄では健全で、かつききめがある。
知覚の戸が拭い浄められたならば万物はありのままに、無限に見える。
人間は自己を閉じ込め、彼の洞穴の隙間から覗くようになっている。

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「本来の栄光に包まれたサタン」 by W.Blake

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白壁の緑の扉 バベルの図書館8
彼には、この世とはまったく別の、比較を絶した美しい世界に通じる、特別な秘密の滑走路が見えたのではないか? とにかく、それは、最後には彼を裏切ったと言えるかもしれない。だが、果たして裏切られたのだろうか? その点にこそ、夢見る人、幻想や想像力にめぐまれた人の、真の秘密は潜んでいるのだ。われわれは、この世を常識で見ている。板囲いは板囲い、穴は穴だとしか思わない。われわれの白昼の基準で考えれば、彼は安全な場所から闇へ、危険の中へ、死へと転落して行ったのだ。
だが、彼はそう考えただろうか?

今日の1曲
Break On Through (To The Other Side)「ブレーク・オン・スルー」 / The Doors
http://www.youtube.com/watch?v=ogkoskneNII
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ハートに火をつけて 紙ジャケット仕様(2000年版)
ハートに火をつけて 紙ジャケット仕様(2007年版・40周年記念ミックス)

You know the day destroys the night
昼が 夜を ぶちこわす
Night divides the day
夜が 昼を 切り分ける
Tried to run, Tried to hide
まず 走ってみろ 隠れてみろ
Break on through to the other side
あちら側に 突き抜けろ
Break on through to the other side
あちら側に 突き抜けろ
Break on through to the other side
あちら側に 突き抜けろ

We chased our pleasures here
おれたちは ここで楽しみを追う
Dug our treasures there
あそこでは宝を掘る
Can you still recall
まだ おまえは おぼえているかい
The time we cried?
二人が 泣きわめいたときのことを
Break on through to the other side
突き抜けろ あちら側に
Break on through to the other side
突き抜けろ あちら側に

Everybody loves my baby
誰もが おれの女を愛してる
Everybody loves my baby
誰もが おれの女を愛してる

She gets, she gets
彼女は 彼女は 彼女は すべてを
She gets, she gets
手に入れる

I found an island in your arms
おまえの腕の中に島を見つけた
Country in your eyes
瞳の中に故郷を
Arms that chained
腕には 鎖
Eyes that lied
眼には 偽り
Break on through to the other side
突き抜けろ あちら側に
Break on through to the other side
突き抜けろ あちら側に
Break on through
突き抜けろ

Made the scene
世界を造る
Week to week
一週間から 一週間へ
Day to day
一日から 一日へ
Hour to hour
一時間から 一時間へ
The gate is straight
入口は 一直線だ
Deep and wide
深く 広い
Break on through to the other side
突き抜けろ あちら側に
Break on through to the other side
突き抜けろ あちら側に
Break on through ....
突き抜けろ ・・・・・・

訳詞は、こちらからの引用です
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ドアーズ詩集 シンコー・ミュージック

オマケで…
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ジム・モリソン詩集 神/新しい創造物 一風堂
ジム・モリスン詩集 「神」「新しい創造物」 新宿書房


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