愛の媚薬 [アート]
トリスタン:
さあ、いまはその盃をいただきましょう、
きょうこそ全快するように。
償いの誓いを
お心にとめてください、
感謝の思いで申しますから。
トリスタンの名誉は
最高の忠実。
トリスタンの悲哀は
果敢な反抗。
心のいつわり、
予感の夢。
永遠の悲しみの
唯一のなぐさめ。
おおなさけぶかいわすれ薬よ、
ためらわずのんでやるぞ。
(と唇を盃にあててのむ)
イゾルデ:
この期におよんでまだだますつもり?
半分は私のよ。(と盃を奪って)
裏切者、あなたのためにのむわ。
(とのんで、盃をなげすてる。ふたりは恐怖におそわれて、極度の興奮のうちにも凝固したように目と目をじいっとそらさず見あう。まもなく目の表情は、死への反抗から愛の灼熱へとかわっていく。ふたりは戦慄して痙攣的に胸をおさえ、その手をふたたび額にあてる。それからたがいに目でもとめあい、あわてて伏目になっては憧憬をましつつふたたび目をあわせる)
トリストラム卿とイソードが愛の秘薬を飲んでしまったこと。
アーサー王物語 Ⅱ
イゾルデ
ビアズリー伝
愛の杯 by ダンテ・ガブリエル・ロセッティ
運命 by ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
媚薬を飲むトリスタンとイゾルデ by ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
媚薬 by August Spiess
トリスタンとイゾルデ by 天野喜孝
トリスタンとイゾルデ (ワーグナー・ペーパーオペラ)
男たち一同:
(帽子をふりながら)
万歳、マルケ王万歳。
(トリスタンは放心のさまで陸のほうを凝視する)
イゾルデ:
どうしたの、ブランゲエネ、
あの叫び声はなあに?
ブランゲエネ:
お姫さま、
ただいまだけでもお心を落ちつけて。
イゾルデ:
どこなの、私生きてるの?
おお、なにをのんだのかしら。
ブランゲエネ:
(絶望にみちて)
愛のお薬を。
イゾルデ:
(愕然としてトリスタンを凝視しながら)
トリスタン。
トリスタン:
イゾルデ。
イゾルデ:
生きていなければならないのかしら。
(と失神して男の胸に倒れかかる)
ブランゲエネ:
(侍女たちに)
お姫さまをお助けして。
トリスタン:
ああ、たくらみにみちたよろこび。
ああ、いつわりにささげられた幸福。
トリスタンとイズー by ジャン・デルヴィル
「死の毒薬」という物語要素は、それまでのトリスタン伝説には存在しなかったもの、つまり、ワーグナーの独創です
愛の純度を保ちながらドラマはより強化され、二度目の自殺行為による「夜の国」への飛翔を目指し滑走します
今日の1曲
Love Potion No. 9 「恋の特効薬(ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン)」 / The Searchers
ポーション < ハイポーション < エリクサー です
http://www.youtube.com/watch?v=uHxJUdKntB0
ラヴ・ポーションNo.9 / サーチャーズ・ベスト・ヒッツ・コレクション