角川文庫リバイバルコレクション [ブック]
これも国書刊行会(「世界幻想文学大系」全45巻)の1冊でした
バルザック 『セラフィタ』 角川文庫リバイバルコレクション
男女の性質が融合し、肉欲を離れた両性具有の裡に実現される天使のような恋愛を描いた本書は、バルザックの「神曲」とも「ファウスト」ともいわれる神秘の書である。
…だそうですが、中身については全く記憶にございません(笑)
仕方がないので、「私が選ぶ国書刊行会の3冊」の中で、『セラフィタ』を挙げている知名の方々のコメントを拝借しておきます
山尾悠子
「焦がれるほど、夢に見るほど読みたいのに手に入らず焦燥する本というものが昔はあって、長らく入手困難だった『セラフィタ』の新訳がついについに発売された時、かえって脱力してしまったことを思い出す。」
長野まゆみ
「学生(またはプー)のころは、両性具有だの両性喪失だのというコトバを目にしただけで、妄想世界に飛んでいた。書物を入手するより先に、伝え聞くうわさ話に舞いあがる。セラフィタとサラジーヌはその双璧だった。書物の価格は、予算的にはまったく問題外だった。この本は、社会人になってから新装本を買った。」
角川文庫版は、初版が1954年、再版(=リバイバルコレクション)が1989年、一方、国書刊行会版は、初版が1976年ですから、角川文庫版が先となります
また、長野さんのコメントに出てきた『サラジーヌ』についてですが、こちらもバルザックの作品で、なんと岩波文庫化されているのを最近リアル書店で見つけて…感動の涙を流したばかりです(笑)
さて…これで終わりにしてしまうのは、さすがに良心が痛むので、今回は角川文庫リバイバルコレクションにスポットを当ててみることにします
実は、角川文庫は昨年が創刊65周年で、秘かにアニヴァーサリー記事を予定していたのですが、私の怠慢のせいで、未だ企画中の段階です
角川文庫は玉石混淆のシリーズだと思うので、ちょっと趣向を変え、「玉」ではなく「石」の部分にフォーカスして、角川文庫のトンデモ本を紹介するつもりでおりますので、もうしばらくお待ちください
で、リバイバルコレクションの方ですが、こちらは角川文庫創刊40周年記念(したがって、今から25年も前!)の特別企画で、読者アンケートによる限定復刊でした
角川文庫リバイバルコレクション PART1 1989年6月5日発行
30作品43冊が復刊されましたが、店頭で発見するのが遅れて、入手できたのは2作品だけでした
アナトール・フランス 『舞姫タイス』
博学フランスの名文は、聖者パフニュスと、舞姫タイスの交渉を描きながら古代アレキサンドリアの生活や迫害を避けて砂漠をさすらうキリスト教徒の生活をいきいきと再生させている。
マルキ・ド・サド 『閨房哲学』
古典主義時代の終焉を体現した、18世紀バスティーユの遊蕩者は、今世紀に入りシュルレアリスト達の教父母として蘇った。本書は対話体で語られる論戦的な思想とフランス大革命に寄せた辛辣な論文を収録。
なお、『舞姫タイス』は白水Uブックス版、『閨房哲学』は河出文庫版と桃源社版単行本(新・サド選集)も持っています
角川文庫リバイバルコレクション PART2 1989年11月15日発行
24作品36冊が復刊
第一弾があっという間にソールド・アウトで苦情が殺到したのか、第二弾が出ることになり、うれしいことに第一弾のうち10作品11冊が再「復刊」となりました
PART1の再発
ネルヴァル 『暁の女王と精霊の王の物語』
夢の中の感情を描く「狂気の浪漫主義詩人」ネルヴァルが、東方旅行の途上、コンスタンチノープルで耳にしたシバの女王バルキスと伝道者ソロモンの幻想的な恋物語。
ランボオ 『ランボオの手紙』
地獄の季節破棄説の真相、アラビアへの逃亡、ブラッセル事件等を中心に展開する天才詩人ランボオの書簡は、彼の生活をなまなましく露呈している。ランボオ自身の挿絵、陳述書を折り込んだ本書は単なる書簡集ではない。
ヴァレリー 『ヴァレリー文学論』
マラルメに私淑したヴァレリーは1898年以来20年間、文学上の方法を探究すると称して文学と完全に絶縁状態を続けた。本書は文学的沈黙を守ったその思索の頂点であり、文学上の重要な根本意義を解き明かした。
コクトー 『阿片 或る解毒治療の日記』
詩人であり劇作家、またある時は映画監督。本書は、虚と真実を自由に横断したマルチ・タレント、ジャン・コクトーが、愛弟子ラディゲの死による孤独のため陥った阿片中毒の解毒治療中に綴ったデッサンとノートによる。
スウェン・ヘディン 『さまよえる湖』
井上靖氏の名作や椎名誠氏らの調査により注目を浴びている中央アジア、幻の都「楼蘭」。本書は、古来、幻の湖としてその姿を見せなかったロプ湖をつきとめ、楼蘭王国の存在を明らかにしたヘディン博士の苦闘の探検記録である。
エイゼンシュタイン 『映画の弁証法』
「戦艦ポチョムキン」の監督としてその名を知られるエイゼンシュテインは、数々の実践により、映画の基礎理論を確立した。本書は「映画の原理と日本文化」「モンタージュの方法」など彼の重要な映画理論を収録。
『さまよえる湖』は岩波文庫版も持っています
T・E・ロレンス 『砂漠の反乱 アラビアのロレンス自伝』
第一次大戦の頃、独立運動の熱風吹くアラビアに投じられたイギリス人ロレンス中尉。やがて彼は、対トルコゲリラ戦のなかで、遊牧民族の無冠の王となっていく。砂漠の民に賭けたひとりの男の、壮大な革命と栄光の叙事詩。
オルテガ・イ・ガゼット 『大衆の反逆』
“大衆”という、最も把えにくい命題を、理論的に体系づけた名著。彼は独自の「生の理論」をもって、大衆のエネルギーを賞賛しつつも、文明を、自ら熟知操作できなくなっている野蛮人として鋭く批判する。
『大衆の反逆』は中公バックス(世界の名著)版も持っています
続いて、PART2の新規復刊(『セラフィタ』もそうでした)
ボードレール 『人工楽園』
徹底して俗物主義に対抗し奇矯であることにつとめた象徴派のボードレールが、本書で、酒、アシーシュ、阿片等の効果と害毒について、陶酔と覚醒のなかで記す。
フロベール 『サランボオ』
今は跡かたもなく消え去った前3世紀のカルタゴを舞台に、ヌーボー・ロマンの源流に位置するフロベールが描く女神官「サランボオ」の至純の恋。〈小説の世紀〉を代表する傑作。
コクトー 『山師トマ』
「死んだ真似をしなけりゃ殺られてしまうぞ」と自らの戦死すら虚構化してしまうトマは、無邪気にふるまいだれにも疑われることがない。モダニストを代表するコクトーが描く現代の神話。
ワイルド 『獄中記』
イギリス世紀末のデカダンとダンディズムの指導者だったワイルドが、同性愛的性癖がもとで投獄され書き記した懺悔録。芸術と実生活で唯美主義を実践した著者の“深淵より”語られる内省と思索。
イエーツ 『鷹の井戸』
本書は、わが国の能舞台にヒントをえた作品として広く知られる。古色ゆたかなアイルランドに生をえた薄明の詩人イエーツがケルト神話をもとに描いた幻想と神秘の物語。
ニーチェ 『偶像の薄明』
神に死を宣告したニーチェが発狂する直前に記した本書は、ニヒリズムを乗り越えあらゆる偶像を破壊しようとする火のごとき発言にあふれている。
J・G・フレーザー 『火の起原の神話』
原始宗教の起原を呪術とその儀礼に探り、諸文化の様相を導きだそうとしたフレーザーが、意識下にうごめく世界各国の民俗の深層心理を「火の神話」を通じて描いた名著。
角川文庫リバイバルコレクション PART3 翌1990年11月15日発行
20作品25冊が復刊
スタンダール 『カストロの尼』
スタンダールいわく「小説は若い伯爵夫人が徹夜して読むようなおもしろさをもたねばならぬ」。表題作ほか傑出したドラマの数々を収録した珠玉の短編集。
バルザック 『純愛 〈ウジェニー・グランデ〉』
ウジェニーの純愛と父グランデの貪欲。さまざまな情熱のかたちを完璧な人物描写と風俗描写で描く詩情ただよう「人間喜劇」。著者四大傑作の一。
『カストロの尼』は岩波文庫版も、『純愛』は旺文社文庫も持っています
ニーチェ 『反時代的考察』
本書は、最も仮借のない文明批評家ニーチェが、当時の俗流ドイツ的教養主義に投げつけた爆弾である。「教育者としてのショーペンハウワー」「バイロイトに於けるリヒャルト・ワーグナー」など四篇を収録。
プラトン 『プラトン書簡集』
ギリシャ哲学の高峰であるプラトンが、デュオニソス等当時の一流政治家たちへ宛てた手紙の数々。訳者多年の研究による解説を付す。
バートン版 『アラビアンナイト物語 千夜一夜物語拾遺』
これほど全世界に広く流布されている物語は少ない。民話として中東に語り伝えられた奇想天外な美しい空想の世界を、定評あるバートン版で贈る。
バートン版 『カーマ・スートラ』
古代インドの〈愛の経典〉。著者のヴァーヤーヤナは修行僧としてひたすら神を見つめながらこれを著した。きわめて学究的かつ具体的な“性典”として知られる秘書。
『アラビアンナイト』は、同じくバートン版を国書刊行会単行本(バベルの図書館)でも持っています
また、ガラン版もバベルの図書館で持っています
フロイド 『文学と精神分析 〈グラディヴァ〉』
ドイツの作家イェンゼンの空想的な著作「グラディヴァ」をフロイドが精神分析的アプローチで読み解く。精神分析の文学への最初の応用として絶賛された画期的著述。
H・G・ウェルズ 『世界文化小史』
宇宙の創造から現代にいたる歴史を物語として、わかりやすく著した名著。世界平和を求めて苦悩する人類の前に、ウェルズは独自の歴史観にもとづいて、人類史の回顧と将来への展望を提示している。
硬派な本でカムフラージュしていますが、実は(わかる人にはわかると思いますが)エロの占める割合が高いです(笑)
25年前の若気の至りということで、お許しください
今日の1曲
Kama-Sutra 「カーマ・スートラ」/ Polnareff
ミッシェル・ポルナレフの'90年復活作です
https://www.youtube.com/watch?v=NmNy1fCvqy0
カーマ・スートラ
なお、その後は、
角川文庫リバイバルコレクション → 角川文庫クラシックス → 角川ソフィア文庫
という展開になったようです